近年、ブロックチェーン技術の進展とともに「Play-to-Earn(P2E)」と呼ばれる新しいタイプのゲームが注目を集めています。これらのゲームではプレイヤーがゲームをプレイすることで、実際の価値を持つ仮想通貨を報酬として獲得できます。従来のオンラインゲームではゲーム内アイテムや通貨はゲームの世界にとどまり、現実世界での価値はほとんどありませんでした。しかし、仮想通貨ゲームでは、NFT(非代替性トークン)やブロックチェーンベースのトークンを通じて、プレイヤーが現実の経済的利益を得られる可能性が開かれています。
ゲームによって得られる報酬はさまざまです。多くの場合、ERC-20などの規格で発行されたトークンや、ERC-721やERC-1155規格のNFTが報酬として配布されます。例えば、「Axie Infinity」ではSLPやAXSといったトークンがあり、「STEPN」ではGSTやGMTがプレイヤーへのインセンティブとなっています。これらの資産は仮想通貨取引所で他の仮想通貨や法定通貨と交換できるだけでなく、ゲーム外のマーケットプレイスで売買することもできます。そのため、ゲームをプレイして得た報酬は単なるデジタルアイテムではなく、実質的な資産としての性格を帯びています。
仮想通貨管理にともなうリスク
しかし、そこで得た仮想通貨を安全に保管することは、ゲームで勝つことと同じくらい、あるいはそれ以上に重要な要素です。せっかく苦労して獲得した資産も、適切に管理されなければハッキングや詐欺などによって一瞬で失われてしまう可能性があります。そのため、仮想通貨ゲームで得た報酬の保管について正しい知識を身につけ、安全に運用していくことが、これからのプレイヤーにとって不可欠なスキルとなってきています。
仮想通貨報酬の種類
まず最初に、仮想通貨ゲームで得られる報酬の種類について理解しておく必要があります。ゲームによって報酬の形式は異なりますが、多くの場合、仮想通貨としてのトークン、またはNFTが主な報酬となります。例えば、人気のゲーム「Axie Infinity」では、SLPやAXSといった独自トークンがあり、それをゲーム内のバトルやミッションを通じて得ることができます。他にも、「STEPN」ではGSTやGMTなどのトークンが報酬として支給されます。これらの報酬は、基本的にはブロックチェーン上で発行され、プレイヤーのウォレットに送金されることで所有権が移転します。
仮想通貨ウォレットとは
仮想通貨を保管するためには、「ウォレット」と呼ばれるツールが必要になります(おすすめのビットコイン ウォレットはこちらを参考にしてください)。ウォレットとは、仮想通貨やNFTなどの仮想通貨を保存・管理するためのアプリケーションまたはデバイスのことであり、これがなければ仮想通貨を持つことも使用することもできません。ウォレットには大きく分けて二つの種類があり、それぞれに利点とリスクがあります。
ホットウォレット
まず「ホットウォレット」と呼ばれるものがあります。これはインターネットに接続された状態で使用するウォレットで、たとえばMetaMaskやTrust Walletがその代表格です。ゲームをプレイする際には、こうしたホットウォレットをゲームに接続して使用するのが一般的です。利便性が高く、操作も簡単であり、初心者でも比較的すぐに使いこなすことができます。ただし、インターネットに常時接続されているため、外部からのハッキング攻撃やフィッシング詐欺の対象になるリスクも高くなります。
コールドウォレット
一方、「コールドウォレット」という種類のウォレットもあります。これはインターネットから完全に切り離された状態で仮想通貨を保管する方法であり、物理的なデバイス(たとえばLedger NanoやTrezorなどのハードウェアウォレット)を使用します。コールドウォレットは非常に高いセキュリティを誇り、長期的に資産を保管するのに向いています。しかし、操作に慣れが必要であり、初期投資としてデバイスの購入費用がかかるという点は留意しておくべきでしょう。
報酬で得た仮想通貨がたどるステップ
実際にゲーム内で報酬を得た場合、その報酬はまずゲームの管理するウォレットや一時的なプラットフォーム上に保管されることが一般的です。そこから自分のウォレットに送金するためには、ゲーム内の「Withdraw」または「Claim」といった機能を使用する必要があります。この操作によって、自分のウォレットアドレス宛にトークンやNFTが送信されます。ただし、この時点でブロックチェーンネットワークを使用することになるため、「マイニングフィー」や「ガス代」と呼ばれる手数料が発生します。この手数料は使用するチェーンによって大きく異なり、Ethereumのようなネットワークでは高額になる場合もあるため、事前に確認しておくことが重要です。
報酬がホットウォレットに送られた後、そのまま保管することもできますが、特に高額な報酬や長期的に保持したい資産については、よりセキュリティの高い方法に移行することが推奨されます。つまり、ホットウォレットからコールドウォレットへと資産を移すことで、ハッキングなどのリスクを最小限に抑えることが可能になります。こうした移動はウォレット同士のアドレスを使って簡単に行えますが、操作ミスを防ぐためにまずは少額でテスト送金を行うとよいでしょう。
ウォレットのセキュリティ対策
また、ウォレットを安全に使用するためには、いくつかの基本的なセキュリティ対策を徹底する必要があります。まず最も重要なのは「シードフレーズ」の管理です。ウォレットを作成した際に表示される12〜24語の英単語からなるこのシードフレーズは、ウォレットを復元する唯一の手段です。これを第三者に知られると、その人物はウォレットの中身すべてを自由に操作できてしまいます。そのため、スクリーンショットやデジタルメモなどに保存せず、紙に書いて安全な場所に保管することが推奨されます。
さらに、フィッシング詐欺にも注意が必要です。たとえば、MetaMaskなどのウォレットを偽のサイトに接続してしまうと、そこで承認した操作によって資産が抜き取られてしまうケースが少なくありません。アクセスするウェブサイトのURLが正しいかどうかを常に確認し、可能であればブックマークした正規のURLからアクセスする習慣をつけると良いでしょう。
加えて、ウォレットに承認したスマートコントラクトの状況も定期的にチェックすることが大切です。知らないうちに不正なコントラクトに資産の操作権限を与えてしまっている場合があるからです。こうした承認状況を確認し、不要なものを取り消すためには、「Revoke.cash」などのツールを活用するのが効果的です。
NFTでの報酬
仮想通貨ゲームにはさまざまな種類があり、トークンだけでなく、NFTも報酬として得られることがあります。これらはゲーム内でのキャラクター、装備品、土地など、さまざまな形で存在しており、それぞれが固有の価値を持っています。NFTはトークンとは異なり、唯一無二の存在であるため、OpenSeaやLooksRareといったマーケットプレイスで売買することができます。NFTの保管も基本的にはウォレットで行われますが、こちらも必要に応じてコールドウォレットに保管することが可能です。NFTが表示されない場合でも、トークン自体はウォレットに存在していることがありますので、連携するプラットフォームでの表示設定や手動でのインポート作業が必要になることもあります。
資産の現金化
最後に、資産を現金化する場合についても注意が必要です。仮想通貨を法定通貨に換金するためには、bitFlyerやCoincheck、bitbankなどの仮想通貨取引所に資産を送金する必要があります。その際は、取引所が対応しているチェーンに合わせたアドレスへの送金を行わなければなりません。たとえば、BEP-20に対応している取引所にERC-20トークンを送ってしまうと、資産を失ってしまう可能性があります。また、多くの取引所では本人確認(KYC)を求めているため、あらかじめアカウントの登録と本人確認を済ませておく必要があります。
仮想通貨の世界では、一つのウォレットにすべての資産を集中させることは大きなリスクとなります。そのため、資産の用途や保管期間に応じて、複数のウォレットを使い分けるという分散管理の考え方が重要になります。日常的に使用するウォレット、長期保管用のウォレット、NFT専用のウォレットなど、それぞれの役割を明確にし、安全性と利便性のバランスを取ることが、仮想通貨ゲームを楽しむ上での大切なポイントとなるでしょう。
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